ドンとは誰のことか

太陽の季節/石原慎太郎」を読む。

1957年当時の時代を掴む著作であり、氏の代表作である。
田中康夫が80年代の青年像を描き、いとうせいこうが80年代の少年像を描いたように、ここでは50年代当時の青年像がありありと描き出されている。若大将が湘南からK大学へ通うように、主人公は逗子からK学園に通い、昼は授業をさぼり拳闘に励み夜は女と銀座で遊び丸の内で働く父親とともに東海道線の二等車(今でいうG車(平日550円)か?)で帰宅するようなスタイル。もちろん夏は海にヨットを繰り出し乱恥気騒ぎ。

おそらく「不良学生」などに用いられる「不良」という語に託された意味を一般的な位置にまで定着させたもっとも不良的な小説として記憶されるべき作品なのではないか、という感想。

それにしても、学生や青年たちに対する「不良像」が50年代のこの作品以降あまり変化していないのではないか、と思える。現代における50年前とのギャップより1950年代における50年前とのギャップの方が遙かに大きな衝撃だったのではないかと推測。