ダンDAN壇

壇/沢木耕太郎を読む。

主に「火宅の人」において不遇の人とされていた壇一雄夫人の視点によって語られるもう一人の壇一雄に関する著。この本の著者は沢木耕太郎だが、この本の特徴はあとがきにもあるように四人称という極めて特異な語り口にある。読み始めると早速誰が誰のことを語っているのかわからなくなる。ニュートラルな視点というべきか。視点の不在というべきか。だが読み進めるうちに心地よくなり満足な読後感を味わえるのは、その特異な技巧によるものではなく、ダンその人の人柄にあると思える。
是非とも「火宅の人」の後に読むことをお勧めする。

以上。