出張

kr22006-04-19

新潟へ。

ここのところ新潟へ行く機会が多いのですが、今回はホストのご厚意で遊水館と潟博物館のまわりをぐるっと一回り。数年前訪れたときとは異なる印象をうける。特に内部空間のダイナミズムについて語られることが多い遊水館はそのヴォリュームの扱い方が印象深い。福島潟に隣接するプールというベタな用途設定であることで、設計者は特に地勢的コンテクストをものすごく考慮したのではないかと思われ、青森県立美術館に繋がるたちかたをみた気がしました。

最近いろいろな場所に行くことがあるたびに、ここなら住める、とかここには夏の間だけ住みたい、とかそういう視点が自分のなかに生まれてきていることを感じて、とりあえず自分の中のレンジは「東日本的・西日本的・四国的・北関東的」という分類が生まれていてその中はまた細分化するんだけど興味があるのは「西日本的」であって僕の中では新潟はまさに「西日本的」であるから結構積極的に住んでみたいとか思ったりします。

ダンDAN壇

壇/沢木耕太郎を読む。

主に「火宅の人」において不遇の人とされていた壇一雄夫人の視点によって語られるもう一人の壇一雄に関する著。この本の著者は沢木耕太郎だが、この本の特徴はあとがきにもあるように四人称という極めて特異な語り口にある。読み始めると早速誰が誰のことを語っているのかわからなくなる。ニュートラルな視点というべきか。視点の不在というべきか。だが読み進めるうちに心地よくなり満足な読後感を味わえるのは、その特異な技巧によるものではなく、ダンその人の人柄にあると思える。
是非とも「火宅の人」の後に読むことをお勧めする。

以上。

もし家を建てるなら

日本の造園技術に借景というものがある。
「よく衝突しないもんだな」と思いながら眼下の何千という自動車の往来をぼんやりと眺める導入部をもつ吉田小説のかんじとかLost In Translationの雰囲気とか最近流行の逆ティルトを用いた模型風都市俯瞰写真とかそれらに共通するのは、有機的な都市を風景として捉え直す姿勢だと思う。これは有機的な運動体(都市)の一面を自分にフィットさせることで、全体から一部(一側面)を借りて好みの風景として見立てるものでありまさに借景である。
もし僕が家を建てるなら子供が動くものに目を奪われるように、マイ・フィットな有機体(それはお隣の外壁に息づいた苔でもよいけれど)を探すだろう。

昭和彷徨

kr22006-04-11

陰翳禮讚/谷崎潤一郎(1933)、細雪/谷崎潤一郎(1948)を読む。
そして堕落論/坂口安吾(1946)→火宅の人/壇一雄(1975)→斜陽/太宰治(1947)を読了。
無頼派を流しました。

建築家J.Nouvelが援用するという「陰翳禮讚」は建築的視点が随所に散りばめられており、さしづめ身体空間論とでもよべる内容です。

まるで江戸時代の生活をイメージさせる生活を描写した戦前文学と、より現代に近い生活を描写する戦後の文学の違いは歴然としていて1945を境に日本に変革があったことが分かります。いずれにしても家柄という視点が随所に出てくるので、総中流で育ってきたポストバブル世代には実感がもてない問題設定が多々あります。けれど、読み応えは抜群で非常に面白い。文学に詳しくはないけど、近現代文学は面白いと思います。でも、島崎藤村の「家(1910)」はあまりおもしろくなかった、というより読みづらかった。どの辺が琴線に触れるのか分かる気がします。

さらに、芥川龍之介の卒論が「ウィリアム・モリス研究」だったということに驚きました。

放下す=捨てる

つまるところそれはカネですよ。

と、会社を辞めて政治の道に進むという方(同郷)に、その方の激励会+送別会で諭される。
一年働いてみてそんな視点をリアルに感じられるようになっただけでもとりあえずの収穫だと思っています。

土地が切り売りされて狭小住宅ばかりになっている東京の風景は異常だし非効率的だと思いますが、逆に高層マンションの乱立もあまり好ましくはないので、EV無しでもいける6,7階建の万里の長城みたいな長大な集合住宅ができたらまちのヴィスタが変わるのではないかとも思うけれどもそれじゃパリみたいになって日本的特性がないしそう考えるとそもそもの都市計画(ユルバニズム)の脆弱さが問題なんではないか、いや、でも戦後の復興計画は一定の成果をあげてるじゃないか、ひょっとするとポストバブルの特徴というのは個々人がそれぞれの建築をつくりあげることなのか、はたまた部分から全体へとそういう主体の集合によって街ができあがっていくのか、成熟した今だから全体を統制するルールをみんなでカネを出し合ってつくる必要があるのではないか、とひととおり逡巡して、都市プランナーと自称する政治家氏(既出)に日本の都市形成の一端を担ってもらいたいと思います。

日本界

kr22006-03-05

昨晩の酒が残る体にむちうちながら適当に掃除をこなして新幹線にとび乗る。

新潟へ。
燕三条で銀食器を見学後、アマテラスオオミカミのひ孫がまつられている神社へいく。
神社の緑のもつ独特な湿気感がよい。杉林の中に自生した苔は天然のカーペットのように柔らかく心地がよい。
柏崎の海岸を散歩して長岡で夕日を拝み、新幹線にて帰宅。
疲れた。

スメルスケープ

kr22006-03-04

ほとんどギリギリに「前川國男建築展」へ。

松隈氏、南條氏(森美)がいた模様。
最近のといっても4、5年前からの建築ブームの到来によって最近は一般の人も建築展に足を運ぶようになったのかいろんな人がいて熱気と活気がある展覧会でした。満足。


早稲田リサーチパークへ。
山下設計の担当者は間違いなく、MVのV-PROとOMAのEDUCATRIUMが好きだ。構成がそのまんまではないか。確かに間違ってはいないが。。
なんだか植栽計画が適当だという印象です。この建築は駅を降りるとぷーんとネギ臭がしてくるような一面のネギ畑である周辺から一歩引きこもった里山に計画されています。ネギを植えろとは言えないけれど、敷地の里山感をもっと残してもよかったような気がします。